匠投資顧問は登録取消し?新規の8,000万円を既存顧客の償還金に回した件を検証【2026年】
目次
検証対象: 匠投資顧問株式会社に対する行政処分について(関東財務局)
「匠投資顧問 行政処分」で検索して、ここに来たはずです。
お金を預けていた人なら、自分の資金は今どこにあるのかが一番気になるはずです。
先に結論を書きます。匠投資顧問は、新規顧客の8,000万円を既存顧客の償還金に回していたとして、2026年5月29日に登録を取り消されました。
その間に顧客へ渡された運用報告書には、「安定した運用を行っている」と書かれていました。
当サイトが公的資料で確認できたのは3つです。
- 投資先の医療法人から、元CIOが2億500万円を私的に流出させていた
- 新規4人の投資資金計8,000万円が、既存顧客延べ24名への償還金の原資に使われた
- 関東財務局が登録取消しを命じ、会社は同日に「全ての業務を終了」と告知した
「投資一任は怖い」と感じたなら、その感覚は無理もありません。
ただ、怖がるだけでは前に進めません。代表は「損害を被った方は誰一人いない」と反論しています。どちらを信じるかで迷う人が出るからです。
必要なのは「損した人がいるか」の答えではありません。預けたお金が今どこにあるかを、自分の言葉で言えるかという物差しです。
お金を人に預ける投資一任と、自分で売買する投資助言では、確認すべきことがまるで違います。
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自分の口座で自分の判断で動かす、という前提を崩さないための物差しとして使ってください。
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匠投資顧問とは?投資運用業まで持っていた登録番号367号の会社
匠投資顧問株式会社は、東京都千代田区紀尾井町の会社です。登録番号は関東財務局長(金商)第367号でした。
投資助言・代理業だけではありません。第二種金融商品取引業と投資運用業の登録も持っていました。顧客のお金を預かって運用できる立場です。

監視委員会の勧告文によると、資本金は1億円、常勤役職員は8名。代表取締役は矢野英明氏です。
国税庁の法人番号公表サイトも確認しました。


2016年7月1日に、商号を「匠投信投資顧問株式会社」から変えています。会社の告知には「2013年の商号変更以来」とあります。公表前の変更がもう1回あったと読めます。
最終更新は2018年7月。処分後の解散や清算の記録は、9月14日時点で載っていません。
関東財務局が問題にした「お金の流れ」を3段階で追う
2026年5月29日、関東財務局は処分文を公表しました。監視委員会の勧告は5月15日付です。
処分文は長いですが、投資一任契約の部分は3段階に分けると読めます。お金の流れに沿って追います。
投資先の医療法人から、2億500万円が流出していた

仕組みはこうです。顧客のお金は「甲社」の社債に回ります。甲社はそれを「乙医療法人」の事業に投資していました。
甲社の代表取締役は、匠投資顧問の矢野代表本人。乙医療法人の資金管理は、匠投資顧問の元CIO「X」が担っていました。
2017年6月から2021年4月までに、延べ17名から総額2億4,000万円を預かりました。うち2億1,000万円が甲社債へ。その資金のうち2億500万円を、Xが乙医療法人から私的に流出させていました。
財務局は、この状況を知りながら同じ投資先へ運用を続けたことを問題にしています。
新規4人の8,000万円が、既存顧客24人の償還金になった

2021年9月末までに、矢野代表は既存顧客への償還金の支払いに懸念があると認識していました。
その状況で、新たに4人の顧客と投資一任契約を結びます。顧客A・B・Cが各1,000万円、顧客Dが5,000万円。医療法人の事業に投資して運用する、という説明でした。
実際には、この8,000万円は甲社債の取得に充てられていません。償還日を迎えた既存顧客等、延べ24名への支払いの原資に使われました。
しかもこの使い道は、契約前に取締役会で報告されていました。会社として決めた流れです。
運用報告書には「安定した運用」。実態はなかった
顧客A・B・Cには、2023年7月から2024年3月にかけて運用報告書が交付されています。
内容は、甲社債を通じて乙医療法人の事業に投資し「安定した運用を行っている」。運用されていないお金について、運用中と報告していたことになります。
ほかにも3つ認定されています。顧客B・Cの資金を会社名義の口座で預かったこと。運用報告書を1年以上交付しなかったこと。Xの行為を把握しながら当局に届け出なかったことです。
新しく預かったお金で、前の人に払う。この流れを財務局は「投資先の都合を優先した行為」と書きました。
払い続けている間は誰も損をしません。止まった瞬間に、最後に入れた人のお金がなくなる構造です。
❞助言業務でも2つの違反|無登録の海外商品と架空の「お客様の声」
投資一任とは別に、投資助言の側でも2つの問題が認定されました。

1つ目は、マン島のRL360社が組成した「RSP」という積立商品です。日本の居住者から集めたお金を運用する以上、投資運用業の登録が要ります。
RL360社に登録はありません。匠投資顧問はそれを検討しないまま、39名の顧客にRSPを助言していました。

関東財務局は勧告と同じ5月15日に、RL360社を無登録業者として警告しています。助言した側と、された商品の両方に当局が動いた形です。

2つ目は広告です。取締役のY氏が「お金のお悩み相談窓口」というサイトを運営していました。そこから匠投資顧問の契約を勧誘していたのです。
そのサイトには商号も登録番号もありません。「お客様の声」には架空の顧客が載っていました。ストックジャパンの架空の体験談と同じ型です。
処分の内容|登録取消しと、返還の方針を求める8項目

処分は登録取消しです。スカイキャピタルやアルファ・キャピタルと同じです。業務停止を飛ばして、登録そのものが消えました。
あわせて業務改善命令が8項目。目を引くのは4番目です。「顧客の意向を踏まえ、運用財産の顧客への返還に関する方針を策定し、速やかに実施すること」。
返還の方針を作れ、と命じています。裏返せば、当局は返還が終わっていないと見ている、ということです。
| 日付 | 出来事 | 出典 |
| 2017年6月〜2021年4月 | 延べ17名・2億4,000万円の投資一任契約。Xが2億500万円を流出 | 関東財務局 処分文 |
| 2021年9月30日まで | 矢野代表が償還金の支払いに懸念を認識 | 関東財務局 処分文 |
| 2022年5月〜2024年1月 | 新規4顧客と8,000万円の契約。既存顧客への償還に充当 | 関東財務局 処分文 |
| 2026年5月15日 | 監視委員会が勧告。関東財務局がRL360社に警告 | 監視委員会・関東財務局 |
| 2026年5月29日 | 登録取消し・業務改善命令。会社が「全ての業務を終了」と告知 | 関東財務局・公式サイト |
「損害を被った方は誰一人いない」|代表コメントと認定を並べる
匠投資顧問の公式サイトは9月14日時点で残っています。勧告の日に、矢野代表名のコメントが出ていました。

要点は3つです。「当社の主張と監督機関の事実認識に大きな隔たりがある」。「行政当局の認識が是であり、受け入れる」。そして「金融商品取引業の廃業を機に、新たなビジネスを創出したい」。

会社側の主張はこうです。収益金も償還金も遅滞なく支払われている。原資は医療法人の収益と事業の譲渡代金。「損害を被った方は誰一人おりませんでした」。
財務局の認定と並べます。
| 論点 | 会社の主張 | 財務局の認定 |
| 償還金 | 遅滞なく支払われた | 支払いの原資は新規4顧客の8,000万円 |
| 運用の有無 | 運用は行われていた | 4顧客の資金は甲社債の取得に充てられていない |
| 顧客の損害 | 誰一人いない | 損害の有無は認定せず。「信認を裏切るもの」と評価 |
| 元CIOのX | 2021年9月以降に関係を断った | Xの行為を把握後も当局へ届け出ていない |
2つの文書は、同じ事実の別の面を見ています。会社は「払えた」ことを語り、財務局は「何で払ったか」を問題にしました。
読者が持ち帰るべきなのは後者です。損をしていないことと、約束どおり運用されていたことは、別の話です。

処分の当日、会社は「全ての業務を終了」と告知しました。問い合わせ先の電話とメールは残されています。
「誰も損していない」は、投資一任の反論として一番よく聞く言葉です。
でも読者が確認すべきは、その言葉ではありません。自分の名前で、自分の資金が、今どの口座にいくらあるか。それを書面で示せるかどうかです。
❞評価できる点
一方で、事実として評価できる点もあります。3つ挙げます。
- 勧告の当日と処分の当日に、公式サイトで代表名のコメントと告知を出している
- 「行政当局の認識が是であり、受け入れる」と処分を争わない姿勢を明言している
- 業務終了後も問い合わせ先の電話番号とメールアドレスを残している
本店不明のまま消えた例に比べれば、連絡が取れる状態で終わった会社です。
足りないのは、返還の方針がどうなったかの公表です。改善命令の4番目に対する答えは、サイト上では確認できませんでした。
匠投資顧問についてよくある質問
匠投資顧問は今も営業していますか?
していません。2026年5月29日に関東財務局が登録を取り消しました。会社も同日に全ての業務を終了したと告知しています。
問い合わせ先の電話番号とメールアドレスは残っています。9月14日時点で公式サイトに載っていました。
預けたお金は返ってきますか?
処分文は「返還に関する方針を策定し、速やかに実施すること」を命じています。返還そのものを保証するものではありません。
契約書と運用報告書を手元にそろえてください。そのうえで、会社の問い合わせ先と金融庁の金融サービス利用者相談室の両方に連絡してください。
「損害を被った人はいない」というのは本当ですか?
会社側の主張です。財務局の処分文は損害の有無を認定していません。代わりに「新規顧客の資金が既存顧客の償還に使われた」と認定しています。
2つの文書は矛盾しているわけではなく、見ている点が違います。
RL360のRSPを勧められた人はどうすればいいですか?
関東財務局は2026年5月15日にRL360社を無登録業者として警告しています。日本の法律による保護が及ばない前提で考えてください。
契約書と送金記録を保存してください。消費者ホットライン188か金融庁の相談窓口に状況を伝えてください。
まとめ|匠投資顧問の元顧客がいま確認すべきこと
調べた内容を一覧にします。「損した人はいない」で安心せず、自分の資金の所在を書面で確かめてください。
| 確認した項目 | 結果 |
| 登録番号 | 関東財務局長(金商)第367号(2026年5月29日 取消し) |
| 業務の種類 | 投資助言・代理業、第二種、投資運用業 |
| 投資一任の規模 | 延べ17名・2億4,000万円+新規4名・8,000万円 |
| 流出した金額 | 元CIOのXが乙医療法人から2億500万円 |
| 新規資金の使い道 | 既存顧客延べ24名への償還金 |
| 助言業務の問題 | 無登録RSPを39名に助言/架空の「お客様の声」 |
| 会社の現在 | 2026年5月29日に全業務を終了(問い合わせ先は残存) |
| 会社の主張 | 「損害を被った方は誰一人いない」 |
この記事を読む意味があるのは、次のような人です。
- 匠投資顧問と投資一任契約を結んでいて、返還の手続きを知りたい人
- RSPを勧められて契約し、今の扱いを確かめたい人
- 投資一任契約を検討していて、「運用報告書」の読み方を知りたい人
反対に、次の考え方には注意が必要です。
- 「償還金が遅れていないから大丈夫」と支払いの有無だけで判断している人
- 「投資運用業の登録がある会社だから」と登録の種類で安心している人
- 「代表が反論しているから処分は不当」とどちらかを全面的に信じている人
投資一任契約を結ぶ前に確認したい5項目
- 投資先の会社の代表が、運用会社の代表と同じ人物ではないか
- 自分の資金がどの口座に、誰の名義で置かれるかを書面で示せるか
- 運用報告書が半年に1回以上、契約から遅れずに届く約束か
- 投資先の商品が日本で登録された業者のものか
- 勧誘してきたサイトに商号と登録番号が書かれているか
株的中.comは1,000件を超える投資顧問・株情報サイトを検証し、読者からのべ39,000件以上の口コミが寄せられています。その中から見た所感です。
私が見たのは、関東財務局の処分文、監視委員会の勧告文、RL360社への警告、国税庁の履歴、そして会社のコメントと業務終了の告知です。
投資先の代表と運用会社の代表が同じ人。この時点で、顧客のお金は投資先の都合で動く危険を抱えていました。処分文が最初に指摘しているのもそこです。
「誰が誰に払っているか」を自分で説明できない投資一任は、預けない。これが現時点の答えです。
ここで挙げた5項目は、他の投資一任・ファンド型の商品にもそのまま使えます。
投資先と運用会社の代表を照らし合わせる習慣があれば、利益相反の構図に先に気づけます。それだけで避けられる案件は多いです。ユニオン証券アドバイザーズのファンド私募を調べたときも、同じ手順で追っています。処分前の会社情報はこちらの記事に残しています。
お金を預けた先で何が起きているかは、報告書を信じる以外に知る手段がありません。自分の口座で動かす前提なら、その不安はそもそも生まれません。
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「預ける」と「自分で動かす」のどちらが自分に合うか、この記事の5項目で見比べてみてください。
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出典(いずれも2026年9月14日確認)
- 関東財務局「匠投資顧問株式会社に対する行政処分について」令和8年5月29日
- 証券取引等監視委員会「匠投資顧問株式会社に対する検査結果に基づく勧告について」令和8年5月15日
- 関東財務局「無登録で金融商品取引業等を行う者について(RL360社)」令和8年5月15日
- 金融庁「匠投資顧問株式会社に対する行政処分について」令和8年5月29日
- 国税庁法人番号公表サイト(法人番号2010001092059・匠投資顧問株式会社)
- 匠投資顧問株式会社 公式サイト「行政処分勧告に関するコメント」2026年5月15日
- 匠投資顧問株式会社 公式サイト「関東財務局による行政処分について」「業務終了のお知らせ」2026年5月29日





